いなせなファンタジージョーク(職業編)

いなせってなんなんだ? ファンタジー世界のジョークです。
戦士……単純で猪突猛進型という固定観念がある。
魔法使い……何をしているか分からない。不気味がられている。
神官……実直で信心深く、善人として描かれる。




魔法使いが、呪文を唱えるたびになにやら書かれた紙を破っている。
「その札で集中力が高まるんですか? なんの効果もないように見えますけど」
神官が忠告のつもりで尋ねると、魔法使いは憮然として言った。
「そりゃただの紙ですけれど、こいつは一枚が馬鹿に高いんですよ」





魔術アカデミーに新入生を案内していたミス・ジョアンナは、新入生に向かって言った。
「みなさん。ここは実験棟です。我々はいつも最新の注意を払って実験に臨みます。この爆発音は、アカデミーでは日常のものです。ですから、どうか安心してください。この騒音にもじきに慣れますよ」
「とくに何の音もしないようですが」
ミス・ジョアンナは慌てて受話器を取ると、すみやかに警察署と消防署に通報をとった。





未だに冒険者業がさかんなとある町で、男が声を張り上げてチラシを配っていた。
「全大陸魔法使い前衛連盟です、全大陸魔法使い前衛連盟です!」
「全大陸魔法使い前衛連盟? 一体何をする団体なのですか?」
興味本位で尋ねたジョンに、男は嬉しそうに説明してみせた。
「全大陸魔法使い前衛連盟は、後衛に退いてしまいがちな魔法使いがすべての魔法使いが前に出ることをを応援する団体です。
体力や防御に劣るとされる魔法使いの悪印象を払拭すべく、魔法使いに積極的に前衛を任せるのです」
「魔法使いが前衛だって? 馬鹿げている。そんな団体いったい誰が支持するっていうんだ?」
男は誇らしげに胸を張って言った。
「魔法使いじゃない人間ですよ」





とある魔法使いに、「虚空に向かってぶつぶつ話しかけているのが怖い」という近隣住民からの苦情が寄せられた。
なるほどと思った魔法使いは、解決策として人形を造り、人形に話しかけるようになった。
もちろん苦情はさらに増えたので、今度は魔法使いギルドが解決に乗り出すこととなった。
人形は見事な相槌を打つようになった。





盗賊「トラップだ。開けると矢が飛んでくるぞ」
盗賊が宝箱をコンコンと叩いて言ったが、仲間たちには全く違いが分からなかった。
神官「すごいなあ。私には罠がないように見えます」
魔法使い「ぼくには爆発でもするように見えるな」
戦士「俺にも罠がないように見えるな」
戦士はパンと手を叩くと言った。
「よしよし、どのトラップを解除するのか、多数決で決めよう」





冒険者がダンジョンを進んでいたところ、不注意でトラップを踏み、後列に居た神官に矢が突き刺さった。
あわや大惨事と思われたが、奇跡的に矢は神官が首から下げていたアミュレットに突き刺さっていたため、神官は命をとりとめた。
「おお、神よ!」
神官は感極まってむせび泣き、その場で神に祈りをささげた。
「あなたのお慈悲に感謝いたします」
戦士が苦々し気に吐き捨てた。
「いい加減あいつに全身鎧を着ろと言ってやれ!」



2017.1.21
2022.11.05引っ越し後、再掲