大河物語用シナリオ『魔剣フォレスター』


システム:大河物語
傾向:ほのぼの~しんみり
難易度:易しい
所要時間:テキストでおよそ3~5時間くらい
その他:事前にキャラメイクをしてもらって、GMは目を通しておくのを推奨します。

どんなシナリオ?

ホームの町で見つかった「喋る剣」のおつかいをこなすクエストです。

以下、GM向け概要

喋る剣フォレスター

『私はアランの剣、フォレスターだぞーーっ!』
自我を持ち、喋る剣です。
もともとは100~150年前、マルディリアの100年戦争の時に魔族が使用していた魔剣でした。しかし、はずみで善良な戦士(後述)の手に渡り、それからは持ち主の影響ですっかり丸くなりました。
150年前、ホームの町付近の吊り橋での戦いでアークフィアの河に流され、眠りについていました。
「自分をうっかり落としてしまって、アランはとても困っているだろうから、届けて欲しい」と語ります。

精神力のない持ち主の自我を乗っ取って操ったり(PC以外)、震えたりくるくる回ったり、ちょっとだけ動くことができます。自分じゃ移動できません。

フォレスター自身は剣であるがゆえに150年という時の流れがどういうものなのか分かっておらず、そのことを指摘されても、「それなら持ち主も遠くに移動してしまっただろうから、追いつくのも大変だな」という認識です。

公式サイトの、

王国暦151年
英雄アバロンとその仲間たちが、長い探索の果てに“魔王殺しの剣”を持ち帰りました。
同年、マルディリア王、戦死。

あたりが元ネタです。

今は無害ですが、マルディリアの魔剣であり、実は悪しきものの手に渡れば世界を滅ぼしかねない力があります。そうです。この冒険は世界を救うための旅なのです……!(おおげさな口上)

全体的に好きにしてもらって構わないのですが、
シナリオ上で武器種を変更するのも良いですね。
PCの中で、いちばん親切に頼みごとを聞いてくれそうなキャラクターの武器種にしておくとスムーズです。

PCが望む場合、装備されても構いません。
「武勇+1、精神-1」とか、それっぽい数値を与えてあげましょう。

持ち主:アラン(仮名)

フォレスターの元の持ち主です。名前は一番それっぽいPCさんからもじりましょう。
寿命の関係から、人間種です(開始地点で故人です)。
150~160年ほど前、人々のために戦っていました。
あまり設定はありませんが、基本的には善良で(便利だから、と魔剣を使っていたくらい)深く考えないタイプだったようです。
フォレスターと別れた後は……。
・幸せに過ごし、天寿を全うした
あるいは、
・(フォレスターを失った戦いによってではないが)、戦争の終結後、誰かを守って命を落とした
PCさんたちの来歴や、シリアス度によって変更しましょう。

PCのそっくりさんたち

「やあ、〇〇! 〇〇じゃないか! あれ? ちょっと違うな……?」
フォレスターは150年前、PCたちのパーティー一行と雰囲気が似た人物と行動していたようです。名前をもじり、呼び間違ったりします。
これは、PCとの雑談用の設定です。
たとえば職業が同じだとか、武器が同じだとかいって絡んでいきましょう。

導入

最近、巷では「自我のある武器・防具」あるいは「自我のあるマジックアイテム」についての話題が流行っているようです。

なんでも、星の学院の占者が『遺跡の傍で近く目覚める、謳う金属が世界を混乱に陥れる』という予言をしたそうで……。
『謳う金属』を巡り、人々はにわかに活気づいているようです。
(といっても、この占いはアテになるものではなく、人々も「宝くじに当たったらいいな~」くらいのノリのようです。)

軽く個別導入を行い、それぞれのPCが持っていそうな情報を渡します。
そのまま「そういえば、あなたは仲間からこんな情報を聞きました」と言って渡してしまってもいいですし、適当なNPCとシーンを行っても構いません。
共通点がありそうなほかのPCを巻き込んで、同じシーンに登場してもらうのもいいですね!
とくに隠すことではないので、公開で行いましょう。

なお、情報はすべて渡す必要はなく、おおむね、「いろんな人たちが喋る武器を狙っている(それで、引き渡すとまあまあろくなことにならないだろう)」という雰囲気づくりのものです。

(例)

  • ホームの町の周辺で、「自我のある武器・防具」、または「自我のあるマジックアイテム」を探しているものが目につく。
  • (その理由は、星の学院の占者の占いによるものである)
  • 盗賊やごろつきはそれらを探している。売れば、とても良い金になるだろう。
  • 神官たちは「ミルドラ神の持ち物に違いない」として破壊したがっている。
  • 魔術師たちは研究のためにそれらを欲しがっている。なお、見つければ研究のために破壊するつもりである。
  • 自我のある武器や防具、あるいはマジックアイテムというのは、非常に力のあるもので、世界を滅ぼしかねない。それゆえ、各地の王や領主も熱心に探している。

【暴れるごろつき】

個別に情報を渡し終えたら、PCたちに酒場(ないし、任意の場所)に集まってもらいましょう。
たぶん上の情報をわいわいと話し合ってくれることでしょう。
*話すことに迷っていたら、酒場のマスターなどから話題を振ってあげましょう。

しばらく雑談してもらったのち、酔っ払いが現れます。
人々は机の上の食べ物を避難させ、遠巻きに見ているのですが、酔っ払いは剣を持っていて危ないですね。

・様子を観察する
 目の焦点が合っていません。正気じゃないような気がします。

・全員に精神で難易度10の判定を求める
(成功)
 よく見てみると手に剣を持っていて、そいつが喋っているように見えます。
 それは、まわりの人間には聞こえないことばで喋っているようです。あなたたちとはたまたま波長が合ったのでしょうか……。

 どうやって取り押さえるか相談してもらって、判定をしてもらいましょう。目標は、ふさわしいと思う能力値で10くらいが目安です。
 武勇で取り押さえたり、機敏で取り上げたり、あるいは精神で説得させてみたり……。
 スキルでも構いません。

 ちなみに、暴れているのは『魔剣フォレスター』なので、説得に応じるのはフォレスターになります。

魔剣フォレスター

「やあやあ! 私こそは魔剣フォレスターだ!」
「アラーン(仮名)! どこに行ってたんだ!」
 自我のある魔剣です。
「戦いの最中、持ち主とはぐれてしまった」と主張します。
それが150年前であることは、言われない限り気がつきません。
「アランのところまで持って行って欲しい。報酬は持ち主が払う」と主張します。ところが、肝心な場所はフォレスターにはわかりません。
基本的には(動かし易いので)友好的で、ちょっぴりコミカルなノリをお勧めしますが、魔剣らしく世界征服をたくらんでも構いません。

・フォレスターは150年前の武器である
大河世界を読み込んでいるPCの場合は「マルディリアの軍勢と戦っていた」なんてことをこぼしておいたら察してくれるでしょう。雑談で判明して構いません。気がつかなくても情報収集で分かるので、問題ありません。

・(人間なら)もう持ち主は死んでいるはずだ
「そうなのか? 寝てるってこと?」
持ち主の死を分かっておらず、とにかく会いたいと主張します。なにか証拠でも見つけてやれれば納得するかもしれません、としておきましょう。

・どうして今になってフォレスターが目覚めたのか?
特に設定はありません。
「ホームにダンジョンが現れたことと合わせて、世界の変革のときかもしれない」とかテキトーなことを言っておきましょう。

ごろつき

フォレスターを手放したところで気絶していますが、起こすと、フォレスターを発見した場所を教えてもらえます。
ホームのはずれの、アークフィアの大河です。
フォレスターに自我を乗っ取られて暴れていたことは覚えていないようです。
(覚えていると、フォレスターの所有権を主張しかねないためです)

情報収集パート

酒場や、ホームの町で情報収集してもらいましょう。
思いつく限り、どこへ行っても構いません。
また、【百科事典】などで一足飛びをしても構いません。
【百科事典】を使用する場合は、概要を渡して、「〇〇なら詳しい場所や、裏付けする話があるかもしれない……」とか言って情報収集の役に立ててもらうのがおすすめです。

・いろんな勢力がフォレスターを狙っていることをアピールしておきましょう。
とはいえ、フォレスターの言葉は他の人たちにはそうそう聞こえないので、わりと大丈夫でもあります。

町の外に出る場合は後述の【武器の検問】イベントが発生します。
また、手始めに現場検証(川に行く)ことも可能です。
川に向かった場合は、さきに【武器の検問】イベントを処理して、適当に情報を持っているNPCを合流させましょう。

・「アラン(仮)」一行について
そのあたりの町の人たちについては、「聞かない名前だなあ」、という反応です。
その代わり、誰それに聞いてみたらいいんじゃないかな、という情報をくれるでしょう。

物知りの老人や、神殿の文献などを調査することで、以下の情報が手に入ります。
せっかくですから、うまく情報を引き出せたかで「精神」、あるいは薪割のお手伝いを要求して「武勇」、など、難易度7くらいの判定でお手伝いしてもらいましょう。

・アラン(仮)ほかのパーティーは150年近く前の冒険者であり、マルディリアの夜種たちの侵攻からホームを守った勇者たちである。
・郊外に記念碑が建っている。

それを見れば、フォレスターも納得するのではないだろうかと思います。フォレスターも「そこに行けばアランがいるのだな! 行こう行こう」と、乗り気です。

その他の噂話として、
・最近町はずれに夜種が出るらしい。
という情報も得られます。

【武器の検問】

兵士たちがホームの町を通る人たちの武器を取り上げて、何か調べてから返しています。金づちで打って難しい機械での分析をしたり……。
どうやら『特別な武器』を探しているようです。
「はい、どーもどーも。それじゃあ、こちら、お返ししますね」
「あーあ、いくらお告げだっていっても。喋る武器なんてホントに存在するのかよ……」
……あまりやる気はないようです。

ここで(もしもまだ持っていない場合は)

・自我のある武器や防具、あるいはマジックアイテムというのは、非常に力のあるもので、世界を滅ぼしかねない。それゆえ、各地の王や領主も熱心に探している。

みたいな情報をあげてもいいですね。

何らかの手段を使って通ってもらいましょう。回り道をするでもよいです。誰かが気を引いてもらうかするのもあり。フォレスターを普通の武器に偽装しても構いません。
うっかりバレたら「いたぞー!」と追いかけて、判定なしで適当に逃げてもらいましょう。町でしか手に入らない情報はないので、エンディングまで戻れなくても構いません。
(※)「「アラン(仮)」一行について」は記念碑に行く行き掛かり上必要な情報ですが、畑仕事をしている物知りの老人などを登場させて、代わりに答えてもらえばいいでしょう。

【売ってくれないか?】

フォレスターが流れ着いた場所を訪れる場合……。
あるいは、記念碑に行くことを決めてもらったら、魔術師と遭遇してもらいましょう。
魔術師が自我のある武器を探しているようです。
「高く買い取りますよ! 10万G出します。いかがですか?」
フォレスターは「破壊される」と聞くと嫌がります。

おそらくは大半は断ってくれると思いますが、ここでフォレスターを渡しても、……まあそれは一つの結末ということで……いいんじゃないでしょうか。
ピザでも食べて寝ると良いでしょう。
とはいえ、まあ、お金にしっかりしたロールがしたいという場合が大半だと思うので、フォレスターに命乞いでもさせてやりましょう。

命乞いの例:
『ま、待て……そうだ! 私をちゃんと届けてくれたら、私の柄にはまった宝石をやるから!』

【逃げてくる商人】

記念碑までの道中、持ち主と会えるのが楽しみだ、とか、昔は世界征服を望んでいたのだ、だとか、PCたちと適当に話しましょう。

しばらく歩くと誰かが逃げてきます。夜種に襲われている隊商のようです。

夜種3体と戦闘になります。
夜種A:HP10 武勇2、機敏1、精神1 +薙ぎ払い(1回のみ)
夜種B:HP10 武勇1、機敏2、精神1 + 射撃
夜種C:HP10 武勇1、機敏1、精神2 + 投射魔法

PCが2~3人の場合は夜種Cを削ったり、適宜調整してください。

【ゴール】

隊商にお礼を言われた後別れて、記念碑にたどり着きます。
立派な石像があります。武器は持っていません。
『勇者アラン:
この土地を愛し、この土地に眠る』
『過去の人である』というような文言が書いてあります。

フォレスターは、それを見て納得したように、
「ああ、そうか、今は……。
ずいぶんな時が流れていたのだなあ。私も……。
眠ることにしよっかな」
と言って、だんだんと劣化していきます。
代わりに、石像が変化し、武器を携えている形に変わります。
ぽろっと柄から零れ落ちた宝石が報酬です。

※とてもフォレスターに思い入れがありそうなプレイヤーがいた場合、喋らなくなったフォレスターを授けてもよいですね。

経験点+5、報酬おのおの3,000G。
適宜調整してください。

むすび

・シナリオ全般に言えることですが、すべてにおいて変更を加えて大丈夫です!
・PCに導入の「変な剣を拾ってきた」という役どころをお任せしても良いですね。暴れさせるのもなんですから、おっとちょうどいいじゃないか、とごろつきが奪っていったらごろつきが乗っ取られて~などとすればベター。
PLさんが乗り気だったらいっそ乗っ取られるのを任せてもオッケーです。「変な剣を拾ってきて、暴れています。よろしくね」と。チョットかっこ悪い役どころでもあるので、気にしなそうなら。あるいは自分(GM)の手持ちのPCにやらせるのも手です。


2022/5/22

http://blackhat.a.la9.jp/taiga/
大河物語 公式サイト