聞こえない音(解決編)

 そう思った瞬間、我々の側を大きなトラックが走り去っていった。大きくカーブ。地面ががたがた揺れる。
 それで私は合点した。
 振動だ。耳が聞こえなくても、地面が揺れていることはわかるはずだ。すぐ後ろでものを落とせば気が付くはずだ。
「とっさに聞こえないふりをしようとして、棒立ちになったってわけだ」
「まあ、耳が聞こえないと言っても、聞こえない程度には差があるから、それはほんとうかもしれない。だが、嘘はついた。やましいことがあるからだ。さすがに何か知っているだろう」
 トグラはふうっと息をついた。
「共謀しているのか、ただ単に恨みがあって知らんぷりを決め込んでいるのかはしらないが。まあ、前者だと思うね。彼は裏口を見張ってたんじゃないか。たぶん、窃盗団はなんとかフィールド氏よりも気前が良いに違いないね。
さあ、もう一度証言を聞いてごらんよ。きっと何か思い出すと思うね!」


ミステリーを書きたかったらしい。